2021年6月14日月曜日

#京都世界遺産を深掘り#【09.栂尾山 高山寺】

京都世界遺産を深掘り【09.栂尾山 高山寺】


 「高山寺(こうざんじ)」は、京都市右京区梅ヶ畑栂尾(とがのお)にある寺院で、山号を栂尾山と称し真言宗系の単立である。創建は奈良時代とされるが、実質的な開基は鎌倉時代の明恵であり、「鳥獣人物戯画」をはじめ、多くの文化財を伝える寺院として知られる。栂尾は、紅葉の名所として知られる高雄山神護寺からさらに奥に入った山中に位置し、かつてあった神護寺の子院を明恵が再興したといわれている。

 高山寺の中興の祖 明恵房高弁(1173~1232)は、法然の唱えた「専修念仏」の思想を激しく批判し、後鳥羽上皇から栂尾の地と華厳経にある句「日出先照高山之寺」の額を賜わったことをもって高山寺の創立と見なされている。その後真言宗御室派に属していたが、1966年真言宗御室派から離脱し、真言宗系単立寺院となった。

 紅葉の名所として知られる高雄山神護寺から、さらに奥に入った栂尾に位置し、清滝川に沿って周山街道(国道162)をさらに北上すると、北山杉で有名な旧中川町を経て周山(京北町)に至る。高山寺は、中世以降たびたびの戦乱や火災で焼失し、鎌倉時代の建物は石水院を残すのみとなっている。

 もともと神護寺本寺から離れた、厳しい隠棲修行の場所だった高山寺は、山奥にひっそりとたたずみ、境内全体が自然に囲まれた庭園が美しい。寺内には多くの国宝や重要文化財が保管されているが、なかでも一般に有名なのは「鳥獣人物戯画」である。

 鳥獣戯画は、ウサギ・カエル・サルなどの動物に擬して、当時の世相や人物を戯画的に描いたもので、「日本最古の漫画」とも称されている。作者には戯画の名手として鳥羽僧正覚猷(かくゆう)が擬されているが、確証はない。原本は東京国立博物館・京都国立博物館に寄託保管されており、現在高山寺には模写されたものが展示されている。

 京都の名刹名勝を歌った「女ひとり」(デュークエイセス)では、大原三千院や嵐山大覚寺とともに、二番では「京都 栂尾 高山寺 恋に疲れた女がひとり」と歌われている。金閣寺・清水寺・龍安寺というビッグスリーをさしおいて、高山寺などしっぽりと静謐をたたえた場所が選ばれたのは、「恋に疲れた女」に似あうという作詞者のセレクトがあったのだろう。

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