2024年12月10日火曜日

#京都回想記#【29.大学一年生時代は多難だった】

京都回想記【29.大学一年生時代は多難だった】


 合格祝いの手紙をくれたおかげで、O子と接点が復活しその後何度か会うことになった。なかなか彼女の気持ちをつかめないので、お互いに友達を連れてきてダブルデートでもしようともちかけてみた。彼女も同じ女子大のかわいい友達を連れてきてくれて、須磨離宮公園に行った。大きな滝のような噴水など、モダンに整備されたきれいな公園だった。

 紹介された彼女は、大阪の商家のお嬢さんで、小柄だが口数少なくかわいい人だった。彼女とは何度かデートして、大阪まで行ったこともあったが、その後どちらともなく離れることになった。私には、やはりO子が忘れられないところがあったようだ。そんなことしているうちに、大学は夏休みに入った。

 京都の実家に帰ってぶらぶらしてたが、そのうちO子を誘って映画を観に行くことになった。たしかシドニー・ポアチェの「招かれざる客」だったと思う。四条通の映画館前で待ち合わせして、彼女が先きに来ていたが、私がそこにつくと、すでに若い男が話しかけている。

 いわゆるナンパなんだが、そういう場面を想定していなかったので、どういう態度を取ればいいのか、とまどった。しばらく二人の会話を聞いているという優柔不断な態度だったので、あとから思うとおそらく彼女を不満を感じたはずだった。

 映画ストーリーは、ものわかりの良い白人の両親をもった女性が、弁護士として活躍する優秀なインテリ黒人男性と恋に落ち、その彼を始めてディナーに招いて両親に紹介する場面。両親は気持ちよく出迎えてくれたが、どこかぎこちない。当時の黒人問題が背景にある、白人と黒人間の微妙な心情を描いた映画だった。

 帰り道でも話は弾まず、映画内容も米国の社会背景など深く知らないから、気の利いた会話もできなかった。初めてのまともなデートは、失敗に終わった。そんなことで実家でぶらぶらしているうちに、鬱が再発してしまった。それこそデートどころではない心情に落ち込んでしまったわけだ。結局は神戸の下宿も引き払い、当分、京都の実家で過ごすことになった。新入学して晴れやかな大学生活は、一気に反転してしまった。

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