京都回想記【37.オバカなことで留年決定】
卒業論文も無事に合格となって、4年の後期の試験を残すだけになった。卒業しても就職が億劫で、かといってこれと言って特別に進みたい道があるわけではなかった。そんな感じで4年生を過していたので、最終期には多くの必要単位を残したままだった。最終学期に登録した科目の試験に、その多くを単位取得する必要があったが、まあ何とかなるだろうと考えていて、それで留年してもそれはそれでいいかもという状況だった。
登録していた講義の中には、まったく興味が無く、授業にも一度も出てない科目もあった。それでも、試験かレポートに通れば単位をくれる。そんななかで、試験の課題を事前に公表する教官も多かった。そうやって単位を取らせようという思いやりなのかもしれないが、そんな学生を甘やかす教官の姿勢を、けしからんと思って私自身は嫌悪していた。
事前に設問を公表するといっても、通常は3問程度黒板に書いて、ここから1問だけを当日に提示するというパターンだった。ところが私が一度も出ていない講座では、たった1問だけ示して、それを当日の問題とするという教官があった。さっそく下宿先の後輩からは、その模範解答がまわってきた。それを数分間読んで、それを答案用紙に書けば単位になるというバカな話で、学生をバカにしてるというような義憤さえ持った。
まあ卒業単位にゆとりが無いから、取れるもんなら予備に取っておいてもいいかなと思った。ただ、憶えて行って試験場で書くということさえウザく思ったので、別の試験のときに大学のロゴの入った用紙を予備に取っておいて、事前に下宿で書き写したものを、当日の試験教室で提出しといた。
試験結果の合否は、正門脇の掲示板に学籍番号だけ張り出される。登校した時にそれを見ると、合否とは別に、下記の学生は教務に出頭せよとかかれていた。当然思い当る節はあるので、あれまと思った。指定された日時に教務に行くと、教務担当の教授が個別に面接していて、あなたは試験当日にこの答案を書きましたか、と丁重に訊ねてきた。
あっさり観念して事情を話たあと、ところで何で分かったんですかと訊ねると、こういうことがありそうだという意見があったので、当日の答案用紙だけは千枚通しで穴をあけておいたということで、なんともバカバカしい話だった。売春のおとり捜査みたいなもんですなと、面接の教授といっしょに笑った。
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