京の都市伝説・探求【03.貴船神社と丑の刻参り】
叡電鞍馬線に沿って鞍馬街道を北上して行くと、貴船口駅あたりから貴船街道が西に分岐し、貴船川に並行して山間に上って行く。貴船神社参道までの間に、貴船川に沿っていくつかの料亭が立ち並ぶ。夏場になると、それらの料亭が貴船川の清流に川床を設けて、川魚の料理などを提供している。山間の冷気と清流のしぶきが入り交じった空気を浴びながら、旬の料理を食するのは、絶好の気分にひたれる。
貴船神社は本宮・結社(中宮)・奥宮の3ヵ所に分かれており、祭神は高龗神(たかおかみのかみ)とされ、"龗"は龍の古語であり、水源の神、水や雨を司る神とされる。また結社では磐長姫命を祭神とし、縁結びの神としても信仰される。
その一方で縁切りの神、呪咀神としての裏の信仰もあり、「丑の刻参り」で有名である。丑の刻参りは、丑時詣・丑参り・丑三参りとも呼ばれ、深夜の丑の刻に神社の御神木に、憎い相手に見立てた藁人形を釘で打ち込むという、一種の呪術儀式が秘かに行われる。嫉妬に狂った女性が、白衣に扮し頭にかぶった鉄輪に蝋燭を突き立てた姿で行うというのが、典型的なイメージであったりする。
「丑の刻(時)」とは、現在の午前1時〜3時の2時間の幅をもつ時間帯のことで、「草木も眠る丑三つ時」とは、その2時間を4等分した三つ目、つまり2時〜2時半のあたりを指す。いづれにせよ、電灯もない当時としては、まさに真っ暗闇の深夜をイメージさせる。
また、女の情念や怨念といった心情を切々と歌い上げる女性シンガーソングライター「山崎ハコ」の、「呪い」という曲を見つけた。「コーン、コーン、コーン、コーン、釘を刺す。わらの人形、釘を刺す♪」 まさに丑の刻参りの怨念の曲だ。ただし、この引用動画の背景に使われている光景は、残念ながら貴船神社ではなく、大徳寺高桐院の参道のようだ。
(背景画像は、動画掲載者がかってに差し込んだものとのこと)
人の形を模した人形は、古来、人形(ひとがた)ないし形代(かたしろ)と呼ばれ、単なるモノではなく、人の霊を宿すものと考えられている。そこで、流し雛のように、身の穢れを雛人形に託して、水に流して清めるという風に、人の代理として使われる。
丑の刻参りの藁人形にも、当然そのような役割が担わされている。丑の刻参りの源流は、日本書紀にまで遡れるようだが、今のような様式は江戸時代に完成したと言われる。そのひな形は「宇治の橋姫」の話しにみられる。源氏物語宇治十帖にも「橋姫」の巻があるが、ここではまだ穏やかな物語であって、嫉妬に狂う鬼としての橋姫が現われるのは「平家物語」あたりからである。
「橋姫」
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