京の食べ物探索【07.千成餅食堂の世界】
京都に「千成餅食堂」という大衆食堂チェーンがある。厳密にはチェーン系列店ではなく、ゆるやかな暖簾わけによって屋号を共有しているだけで、それぞれ独立した個人経営の食堂のようである。
google mapで検索すると、京都市内に図のような千成餅食堂が見つかる、「千成食堂」とか「千成餅」という屋号もあるので実際はもっと多いと思われる。関西の他地域にあるかどうかは知らないが、京都地域に集中しているのは間違いない。
特徴的なのは、ガラスショーケースなどに、白餅・おはぎ(ぼた餅)・おこわ赤飯・稲荷寿司などが作りおきで並べてあって、調理ものが出来てくる前に、好きなものを取って食べることができる。「餅食堂」というのは、本来餅屋だったのが食堂を始めたということであって、白餅・ぼた餅・おこわ赤飯(もち米を蒸したもの)などは、もともとの扱い商品だったのである。
腹ペコの中高生が放課後に飛び込んできて、すぐに腹を満たせる重宝さで、私も中高時代には友達とワイワイと利用した。中高生の小遣いでも安心して入れて、しかも腹いっぱいになることができたわけだ。ファミリーレストランもマクドナルドやKFCなどもない昭和30年代、速攻で腹を満たせる餅食堂は、肉体労働者などにも愛用された。
写真は実家近くにあって、高校時代に友達とよく立ち寄った店で、50年後の今でもまだ健在のようだ。この手の食堂はしぶとく生きのびるられる。店舗建物は住居兼用、従業員は夫婦でまかなうし、提供食品の原価率は圧倒的に低い。つまり、昼の繁忙時間に来た客だけで原価コストは回収できるので、他の時間帯の売り上げは丸ごと荒利益だと言われた時代だったのである。
同様の疑似チェーンで、大力餅食堂・力餅食堂・弁慶食堂などもあるが、千成餅食堂は比較的京都市内北部に偏っており、若い時の生活圏だったので目に付いたのだろう。これらの大衆食堂で典型的なのが「麺類・丼もの一式」というメニューで、すばやく簡単に調理できるという、いわばファーストフード的な性格を持つ。これは京都だけとは限らないだろうが、京都の大衆食堂では必ずと言えるほど、基本メニューなのである。
ついでだが、いなり寿司には、関西と関東では揚げの形に違いがあるという指摘があった。たしかに関西のイナリは、三角の揚げに寿司飯を詰めた形で、関東のそれは俵型のようだ。握り飯では、関西が俵型で関東が三角握りと、ちょうど逆なのも面白い。
0 件のコメント:
コメントを投稿