2021年5月16日日曜日

#京の食べ物探索#【11.メロンパンとサンライズ】

京の食べ物探索【11.メロンパンとサンライズ】


 全国的にパンを販売している山崎パンなどは、円形で表面にはクッキー風の砂糖でパリッとした皮がのっているものを「メロンパンA」として販売している。全国的にも、大半はこの円形のものをメロンパンと認識されていると思われる。

 ところが私が子供の頃、京都の北区地域で買って食べていたメロンパンは、これとはまったく違って、ラグビーボールを半分に切ったような紡錘形で、皮はソフトなカステラ風、中には白餡が少し入っているものが多かったと思う。

 実はこの形のものを「メロンパンB」と呼ぶのは、京都や神戸あたりに限定される。関東はじめ多くの地区では、円形タイプが圧倒的である。しかし円形のものは、京都や神戸では「サンライズ」という名称で売られている。(A/Bは便宜上、区別するために付加している)

 もともと二つのタイプのメロンパンは、戦前に神戸で最初に焼かれたとされている。どちらが先か不明だが、メロンパンBとサンライズ(=メロンパンA)は、まったく別ものとして作成された可能性が強い。現在のサンライズ(メロンパンA)は、表面の皮に格子状の模様が付けられているが、当初は放射状の線が描かれていたと言われる。つまり、日の出の光を模したので「サンライズ=sunrise」というわけである。

 同様の二つのタイプが京都でも普及しているのは、冒頭の私の経験からも事実である。興味深いのは、それが何故か大阪抜きで、京都に飛び地しているところであるが、その理由は不明だ。そのヒントになるのは、神戸や京都が、パン消費量が全国トップレベルで、その分布が「サンライズ/メロンパンB」の分布と、ほぼ重なるということである。

 全国制覇している山崎パンが、サンライズタイプのをメロンパンと称して売っているので、殆んどの地域の人が、これを「メロンパン」だと思い込んでいる。しかし、パン食先進地域の神戸・京都では、すでに「サンライズ/メロンパンB」という二通りのパンが普及していたので、紡錘形のメロンパンも健在であるというわけだ。

 ここで疑問となるのは、今のマスクメロンとは似ても似つかない、紡錘形のパンが何故メロンパンとして売り出されたのかという点だ。戦前は当然のこと、昭和30年代ごろまでは、メロンというのは最高級フルーツで、果物店では雛壇の最後部にメロン一個だけが鎮座するような世界だった。われわれ庶民の子弟には、とても食べられる果物ではなかったのだ。

 そして「庶民のメロン」として食べたのは、マクワウリであり、黄色い紡錘形にウリ坊主のような縞があるものだった。まさしく「メロンパンB」の原型そのものである。その後、戦後の輸入自由化とかに連動して、マスクメロンやバナナなどの輸入関税が取り払われて、庶民の手に入るようになった。

 そして、サンライズの皮柄も放射光から格子状に変更され、マスクメロンの形状となった。いまやマクワウリを知る世代もほとんどなく、メロンパンと言えば円形格子柄のメロンパンとなったわけである。神戸や京都でも、紡錘形メロンパンを知っているのは、団塊世代あたりまでではないだろうか。

 メロンパンとサンライズの分布や、その歴史を詳細にたどった記事を紹介しておく。

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