京の食べ物探索【09.たこ焼きとキャベツのお話し】
京都では、たこ焼きにキャベツをたっぷり入れる。子供の頃、近くの神社の境内で、毎日屋台でたこ焼きを焼いていたオバサンは、確かにキャベツを、焼き面に広げるように入れていた。そしてタコをひと切れ乗せて、焼き面をひっくり返してゆく。
たこ焼きとはそういうものだと思い込んでいたが、たこ焼き器を購入して自分で焼いたりし出して、いろいろ調べてみると、たこ焼き発祥の大阪・神戸を始め、京都・滋賀以外の関西地方では、キャベツを入れないらしい。
たこ焼き本場の大阪では、たこ焼きにキャベツを入れないで、中のとろみを楽しむのが本物たこ焼きであって、キャベツを入れるのは邪道だということになるらしい。しかし、たこ焼き後発の関東を始め、他の多くの地域はキャベツを入れる。これは何故なのか。
柳田國男の「蝸牛考」によると、都に発生した新しい言葉は、水紋のように同心円を描くように全国に広がってゆくと言う(方言周圏論)。同様にたこ焼きも、大阪で始まった関西一円に広がった。ところが京都では独自の発展をとげ、キャベツを入れて腰のあるたこ焼きとなった。
そうすると、大阪発のたこ焼きは関西を周縁として止まり、京都のキャベツ入りたこ焼きが、その他のたこ焼き不毛の地に展開していったのではないかと考えられる。
大阪は、たこ焼きのひな型である「明石焼き」の影響を、色濃く残している。明石焼きは、卵中心の生地にタコを一切れ入れるだけで、他の具は入れない。大阪のたこ焼きも、小麦粉を出汁で溶いた生地に、タコだけ入れて焼くものもある。他のものを入れても、せいぜいが紅生姜、天かす、刻みネギなどで、主要な具というよりもトッピングに近い。
(附記)2022.04.11
大阪のたこ焼きは明石焼きが発祥かと思っていたが、先ほど、大阪のたこ焼き屋の原型は
会津から伝わったという指摘を受けた。本文はそのままにして、注記しておく。
大阪のたこ焼きは明石焼きが発祥かと思っていたが、先ほど、大阪のたこ焼き屋の原型は
会津から伝わったという指摘を受けた。本文はそのままにして、注記しておく。
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